社会福祉法人共生福祉会 福島美術館

福島美術館通信

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平成28年8月20日

福島美術館通信 No.56
【陳列作品紹介】

巻子「南日本絵巻」作者未詳

江戸時代中期か 紙本墨画淡彩 30.2cm×約882.6cm

(江戸から戸塚 部分)

(長崎五島列島 部分)

この夏、どちらへ旅行されましたか?この秋、旅の予定はありますか?

昔の人々も、現代の人々と同様に旅好きだったようです。特に江戸時代以降、幹線道路として五街道と呼ばれる東海道・中山道・奥州道中・甲州道中・日光道中が整備され、全国を巡る旅が可能になりました。大名達の参勤交代もあり、街道に旅人が宿泊するための宿場や、一休みするための茶店が作られるようになります。そして街道には宿場街が形成され、特産物や土産物が作られ、今で言う観光という業も生まれます。

今日では旅のガイドブックだけでなく、テレビやインターネット、更にはSNSで、あっという間に世界の情報収集が可能です。昔の旅は現代と異なり、「歩く」が基本ですから、旅の計画に大事なのは、地点と地点の距離でした。記録では、江戸から京都に出かけるとき、一般成人男性が日本橋を夜明け前に出発して、最初の宿泊は保土ヶ谷(神奈川県)か、一つ先の戸塚といわれています。距離でいうと八里九町(約33km)あるいは十里半(約42km)歩く計算だそうです。宮城の方にわかりやすく伝えるなら、仙台駅~白石蔵王駅は約31kmなので、仙台から白石までは一日で歩くことになります。

ご紹介する「南日本絵巻」もその距離が示された巻物の形状の絵図です。江戸城を起点に、九州の長崎五島列島までの風景や航路を描いたもので、8枚の紙継ぎにより約9mにも及びます。実際の距離でいうと日本橋からJR長崎駅までは約1240km、更に長崎から五島列島までは約187㎞、この長い行程が記されています。

この絵図には各地の城、寺院、河川をはじめ、著名な地名と地形の概略が道筋に沿って描きこまれています。また、主要な宿場間の里程や茶店、往来する人物も記されており、「東海道西海道(さいかいどう)絵巻」(横浜市歴史博物館蔵)と類似しています。江戸城は1657年の明暦の大火で天守閣を失い、再建後は天守を設けていません。江戸城や駿府城の各天守閣の構図より、制作は江戸時代中期頃かと思われます。

これからの旅、古地図を見ながら歩いてみるのも、「旅通(たびつう)」かもしれませんね。

(文責:尾暮)

〈収蔵品案内〉 熊本出身の画家・堅山 南風(かたやま なんぷう)

平成28年4月に発生した熊本地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。当館では被災地の歴史や文化の理解も支援の一つと考え、熊本出身の画家・堅山南風の作品を、常設展「福島家の玉手箱」でご紹介しました。(※現在は展示しておりません。)

堅山南風(かたやまなんぷう)(1887~1980)は、熊本県出身の日本画家。初め福島峰雲(ふくしまほううん)、上京後は同郷の高橋広湖(たかはしこうこ)に画を学びます。横山大観(よこやまたいかん)の薦めで文展に入選以降は、大観を生涯の師と仰ぎました。日本美術院展再興に参加するほか、日展審査員を務め、1968年には文化勲章を受章しています。

当館で収蔵している作品は、「清遊スケッチ」と「甘果」の2点です。いずれも初夏を彩る季節の作品。堅山は花鳥画や肖像画を得意とし、おおらかで柔らかい筆線と色彩を特徴とします。「清遊スケッチ」は、夏の湖水で漁にいそしむ漁夫たちの賑やかな様子を淡彩で写生しました。「甘果」では網目が盛り上がり、食べごろのメロンのみずみずしさと匂いが感じられるようです。いずれも柔らかい色彩に溢れた作品です。

(文責 相澤)

堅山南風「清遊スケッチ」

堅山南風「甘果」

熊本地震募金の報告と福島美術館からの支援

5月23日~6月30日の期間、受付にて熊本地震に対する募金箱を設置いたしました。多くの皆様からのご協力を頂き、募金総額は6,830円となりました。温かいご支援に厚く御礼申し上げます。皆様からお寄せいただいた募金は、「歴史資料ネットワーク」様にお送りし、現地の被災史料レスキューに役立てて頂きます。

また、福島美術館では熊本・大分県在住の皆さまに限り、受付にてご本人確認書(保険証・運転免許証など)をご提示いただくと、企画展・常設展ともに無料でご招待いたします。期限は平成30年5月5日まで。詳しくはホームページをご覧ください。

一刻も早い復旧と、生活の安定を心よりお祈り申し上げます。

福島美術館事業ご支援のお願い「七福絵はがき募金」

「七福絵はがき募金」は、収蔵資料の保管修復事業や広報活動に活用させて頂いております。今後とも、仙台・街のちいさな美術館 福島美術館の運営活動について、どうぞ皆さまのご支援を賜りますよう、よろしくお願い致します。
※2千円以上の御寄付で、税制上の優遇を受ける事ができます。

◎次回予告
平成28年度 新春展
めでた掛け〜祝いのISYOU〜
平成29年1月5日(木)〜3月3日(金)

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